RELATION relayTalk Project

RELATION Talk 06

イベント06レポート:
『南三陸町からの手紙』が生まれたそれぞれの想い

■生の声をいじるべきではないと思った

──編集を担当された上野さんのお気持ちを教えてください。

上野:編集をやらないかと言われた時、ちょうど震災の2ヶ月前にフリーランスになったばかりでした。どう震災と向き合っていけばいいかわからない状況で、この企画にどう向き合うべきか、とても迷いました。

しかし、「出版業界は斜陽産業」と言われる中で、『南三陸町からの手紙』の出版を引き受けたいと動いた佐藤さんの心意気を聞いて、佐藤さんを助けたいと思い参加を決めました。原稿のサンプルを読んだ際、編集者をやっていてもなかなか出会わないような文章に感動したこともきっかけです。これを本にまとめることを、最後までやり遂げようと思いました。

とにかく生の声が一番強いので手を加えたくなかった。本としても、いっさいの作為のないように心がけました。最初は原稿だけでいいと思ったくらいです。しかし、たくさんの人に手にとってもらい、読んでもらうために野寺さんの写真を挿入し、体裁を整えた書籍にしました。

■通常の5倍難しいデザインだった

──デザインを担当されたおおうちさんのお気持ちを教えてください。

おおうち:今まで手がけた案件の中では、難しい部類に入る仕事でした。被災された方の気持ちは、本当のところはわからない。だから、無作為にしたかったし、文章だけの構成で出してもいいと思っていました。しかし、野寺さんの写真と向き合っていくと、写真を入れる意味も感じるのです。多くの人に見てもらうには写真やデザインも必要かと思い、手に取ってもらえるための工夫をしていきました。

■沢山の人に読んでもらいたい、そして時々思い出してほしい

高橋:被災した友人や知人から文章を集めていると、「人の死を売り物にするのか」というバッシングもありました。そこで、私たちは、「死を美化しない」、「文章に手をつけない」、「お涙ちょうだいはいらない」という3点を約束してお願いしています。バッシングは、僕としてもとても辛かった。しかし、幼馴染の三浦くんのことを思い出し、奮起しながら集めました。50人に声をかけて、実際に書いてくれたのが22名。その人たちの気持ちを本にまとめられて、満足しています。

何回も何回も、思い出して読んでもらえたらなと思います。本が出来てから、三浦くんの奥様の遺影に捧げて初めて、ひとつ区切りがついたように感じています。■


【RTP06 STAFF】
企画・インタビュー:植田 泰
設営:右近 清
映像:進藤之彦
写真:潮崎恭平
記録・ツイート:藤田展彰
記録・執筆:坪井久人(チャリティジャパン)
受付・書籍販売:倉田千津/小川幸子・神山綾(チャリティジャパン)
司会:野田幾子

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