イベント07レポート:
「海と生きる」決意の上にある活動
■透明度30センチ、水温4度の海底清掃
SORDの主な活動は、海底清掃と海底に沈む大型ゴミのマーキングだ。例えば東松島では、海底に津波で流された松が転がってるため、養殖用の網を固定する碇がからまり壊れてしまうことがあった。気仙沼の港では、船が港の底に沈んでいるガレキにプロペラをぶつけ、大破してしまった。高田さんはfacebookでダイバー仲間に呼びかけ、仲間を募った。臼井さんが受け入れの窓口となり、海に潜って漁師の生活に影響を及ぼす大型のゴミを探索している。
2012年3月、階上(はしかみ)漁港探索のため、東京海洋大学のダイビングサークルの後輩を連れ20人弱で潜った。高田さんは当初、水深が浅いところであれば、素もぐりのほうがスクーバダイバーよりも自由に探索ができるのではないかと考えていたという。しかし、海の透明度が思った以上に悪かった。海底から30センチのところに藻とおぼしきものが沈んでおり、そこより先はまったく見えない。手を伸ばして探るしかなかった。水温は4度。保温機能を持たないウェットスーツで1時間潜っていた学生もいた。
5月には、気仙沼港内を探索。透明度は3、4メートルほど。はぐれないようにロープを持ちながらの作業だ。海底には、船やコンテナのかけら、建物の鉄骨などがそのまま転がっていた。車も発見し、中に遺体がないか、窓ガラスについたホヤなどの生物をはがして確認した(ドライバーの無事は後に確認された)。密閉された空間は遺体が中に残っている可能性が高いため、車内は積極的に確認している。
■ 自然の力と海の再生を信じて
SORDはボランティア団体だ。同じ瓦礫撤去でも、漁船を出す漁師には作業費が支給されるが、海に潜っての撤去に対して手当てが出る仕組みはまだ存在しない。高田さん自身、被災地で花火を上げるプロジェクト「Lighe Up Nippon」で協賛金を集めた経験から、ボランティアが協賛金を集めて活動するやり方ではそのうち限界がくると感じている。収益化でき継続可能な仕組みを作ることができたら、ぜひとも地元の漁師たちにももぐって作業してほしいと考えている。
また、より多くの人に海に触れてもらいたい、子供たちが泳げる海を取り戻したいという思いから、気仙沼周辺の海水浴場の再開も手がける。海開きシーズンである7月21日、「SANRIKU UMI-BIRAKI in Oshima」を開催。津波で砂浜に運ばれ埋もれたクギや木片などを取り除く活動のほか、アウトリガーカヌーやスタンドアップパドルのように水面で楽しめるアクティビティ、水中で楽しめるスノーケリング、スキューバダイビングなど、子どもたちと一緒に楽しめるコンテンツを用意する。リレーショントークの会場では、実際にボランティア活動で砂浜の清掃活動の経験がある人から、「大規模にやる時にはぜひ協力したい」との申し出があった。
「海の中には、ヘドロが堆積しています。バールを刺すと、半分以上が埋まるくらいに。それでも、生物はその上にたくましく生きている。ホヤが生き、ワカメも海草も生えている。魚も本当にたくさんいる。これらは海の中にもぐって初めてわかることなんです」
高田さんは、自然の力と海の再生を信じて、活動を続けている。■
【執筆者プロフィール】
藤田 展彰(ふじた のぶあき)
1990年生まれ。滋賀県出身。東京大学4年。
宗教学・宗教史学専修。言葉や概念が救い損ねるものに興味がある。どうしたら伝わるのか、誰が伝える資格を持つのか、実践しながら考える。
TAGS: SORD・気仙沼・臼井壯太朗・高田佳岳07/09/2012
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